一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する(第4章 特殊相対性理論)§1~6
石井俊全「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」ベレ出版 の読後行間補充メモ
(→ 正誤表)
(→ 事項索引)
(→ 第1章 数学の準備)
(→ 第2章 物理の準備)
§1 方程式の共変性
p297 速度、加速度は(1,0)テンソル場。電場・磁場は(2,0)テンソル場
p298 \(F_{x'}, ~F_{y'}\)
中央図は、\(F_{x'}\) を \(F_{x}, ~F_{y}\) で分解したもの。
右図は、\(F_{y'}\) を \(F_{x}, ~F_{y}\) で分解したもの。\(F_{x}\sin\theta \) が \(F_{y'}\) と逆方向なので、マイナスがついている。
\begin{eqnarray}\left(\begin{array}{c}F_x'\\F_y'\end{array}\right)&=&\left(\begin{array}{c}\cos\theta&&\sin\theta\\-\sin\theta &&\cos\theta\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}F_x\\F_y\end{array}\right)\nonumber\\&=&\left(\begin{array}{c}F_x\cos\theta +F_y\sin\theta \\ -F_x\sin\theta+F_y\cos\theta\end{array}\right)\nonumber\end{eqnarray}
p299 10行目
「観測者によらず同じ物理法則に観測されるためには、成分が(1,0)テンソルの変換則を満たすことがポイント」…p305~307の検討結果より。
p300 電場・磁場は、(2,0)テンソル
電磁場のマックスウェル方程式は、2 階の反変テンソルの形になることにつき、電磁場のテンソル表現(EMANの物理学)。
§2 特殊相対論の課題
p305 ニュートンの運動方程式は、ガリレイ変換に関して共変性あり
\(t'=t\) で微分 とは、左辺を\(t'\) で、右辺を\(t\) で微分するとの趣旨。
p305 式4.02
加速度\(a\) は、速度\(v\) の時間微分なので、\begin{eqnarray}a&=&\frac{dv}{dt}\nonumber\\&=&\frac{d^2~x}{dt^2}\nonumber\end{eqnarray}
p305 \(x'y'z'\) 座標は、\(xyz\) 軸と座標が平行
設例上の定義(p303)。
p306 ニュートンの重力場方程式は、ガリレイ変換に関して共変性あり
本書p127 の\[\Delta \Phi(x)=4\pi G\rho(x)\]
p306 4~5行目
\[\frac{\partial}{\partial x}=\frac{\partial x'}{\partial x}\frac{\partial}{\partial x'}+\frac{\partial y'}{\partial x}\frac{\partial}{\partial y'}+\frac{\partial z'}{\partial x}\frac{\partial}{\partial z'}\]は、p29 の定理1.07による展開。
\[\frac{\partial x'}{\partial x}=1\]は、目盛りの長さが同じであることを前提としている。
p306 マックスウェルの波動方程式は、ガリレイ変換に関して共変ではない
末尾4~3行目第1項は、\begin{eqnarray}\frac{\partial t'}{\partial t}\frac{\partial}{\partial t'}&=&1\cdot\frac{\partial}{\partial t'}\nonumber\\&=&\frac{\partial}{\partial t'}\nonumber\end{eqnarray}第2項は、\begin{eqnarray}\frac{\partial x'}{\partial t}\frac{\partial}{\partial x'}&=&\frac{\partial (x-V_xt)}{\partial t}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&-V_x\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\end{eqnarray}等としている。
末尾2行目は、\begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial x}&=&\frac{\partial x'}{\partial x}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&1\cdot\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\end{eqnarray}等としている。
p307 ダランベルシアン
ダランベルシアンの記号: \(\Box\)
1行目は、ダランベルシアンの定義(p203)より。
§3 ローレンツ変換とダランベルシアン
p308 異なる慣性形であっても、電磁波である光の速度は一定 c
マックスウェルの電磁方程式で、\(B,~E\) を求めるには、ダランベルシアン \(\Box\) を含む式で、\(\phi,~\vec{A}\) を求める必要がある(p205)。このため、異なる慣性系でマックスウェルの電磁方程式が同じ形となるには、異なる慣性系でダランベルシアン \(\Box\) が同じ形となる必要がある。ダランベルシアン \(\Box\) は、\[\Box=\frac{\partial^2}{\partial x^2}+\frac{\partial^2}{\partial y^2}+\frac{\partial^2}{\partial z^2}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}\] であり、これが異なる慣性系でも同じ形、\[\Box'=\frac{\partial^2}{\partial x'^2}+\frac{\partial^2}{\partial y'^2}+\frac{\partial^2}{\partial z'^2}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t'^2}\] であるとき、同式の中の光速\(c\) が同じものであること(すなわち、\(c\) が一定)を意味する(\(c\) が、\(c'\) へと変わるのでは同じ形と言えない)。
p308 現実の世界
- 現実の世界(非慣性系)では、光の速度 \(c\) は、一定ではない。
- 相対性理論で扱う光の速度は、真空中の光の速度を前提としている。媒質(ガラス、電線)中の光(電磁波)の伝播速度は、媒質内の原子によって散乱された2次波の干渉により、減少し、光の屈折率として観察される(大津元一「イラストレイテッド 光の科学」朝倉書店p34, 42~43, 54)。
p309 ローレンツ変換
\(x\) 軸方向のローレンツ変換の式は、
- \(ct'=\gamma~(ct-\beta x)\)
- \(x'=\gamma~\left\{-\beta(ct)+x \right\} \)
- \(y'=y\)
- \(z'=z\)
このうち第3式・第4式の単位は、距離[\(m\)]。
また、\(c\) は光速であり、\(t,~t'\) は時間であるから、\(ct,~ct'\) の単位は、\(\left[\frac{m}{s}\cdot s\right]=[m]\) であり、\(\gamma,~\beta\) はいずれも定数なので、結局、第1式・第2式の単位も、距離[\(m\)]である。
p309 ct
時間 \(t\) の単位を秒\([s]\)ではなく年\([y]\)とすると、\(ct\) は、光年(1年間で光が進む距離)となる。
p309 V が c に対して十分小さい場合(ガリレイ変換近似)
\[V\ll c\]のとき、\(\gamma\fallingdotseq 1,~\beta\fallingdotseq 0 \) なので、ローレンツ変換の第1式は、\begin{eqnarray}ct'&=&\gamma (ct-\beta x)\nonumber\\ct'&\fallingdotseq&1\cdot (ct-0\cdot x)\nonumber\\ct'&\fallingdotseq&ct\nonumber\\t'&\fallingdotseq&t\nonumber\end{eqnarray}となり、第2式は、\(\beta=0\) ではなく、\(\beta c=V\) を用いて、\begin{eqnarray}x'&=&\gamma \left\{-\beta(ct)+x\right\}\nonumber\\&\fallingdotseq&1\cdot \left\{-Vt+x\right\}\nonumber\\&=&x-Vt\nonumber\end{eqnarray}となり、ガリレイ変換と同様となる。
すなわち、ガリレイ変換は、ローレンツ変換の特殊な場合(\(V\ll c\))と位置づけられる。
p310 問題4.01
- \(ct'=\gamma(ct-\beta x)\)
- \(x'=\gamma\left\{-\beta(ct)+ x\right\}\)
より、\(t\) を微小変化させると、\(t',~x'\) が変化することが分かる。
よって、\(t\) による微分は、定理1.07(p29)のように、\(t'\) と \(x'\) による偏微分の和として表すことができる。\[\frac{\partial}{\partial t}=\frac{\partial t'}{\partial t}\frac{\partial}{\partial t'}+\frac{\partial x'}{\partial t}\frac{\partial}{\partial x'}\]これに、上記2式を代入すると、\begin{eqnarray}&=&\frac{\partial\left\{\frac{\gamma}{c}(ct-\beta x)\right\}}{\partial t}\frac{\partial}{\partial t'}+\frac{\partial \left[\gamma\left\{-\beta(ct)+x\right\}\right]}{\partial t}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&\frac{\partial \left(\gamma t-\frac{\gamma \beta}{c} x\right)}{\partial t}\frac{\partial}{\partial t'}+\frac{\partial (-\gamma\beta ct+\gamma x)}{\partial t}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&\frac{\partial \left(\gamma t\right)}{\partial t}\frac{\partial}{\partial t'}+\frac{\partial (-\gamma\beta ct)}{\partial t}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&\gamma \frac{\partial }{\partial t'}-\gamma \beta c \frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\end{eqnarray}となる。
同様に、\(x\) を微小変化させると、\(t',~x'\) が変化するので、\begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial x}&=&\frac{\partial t'}{\partial x}\frac{\partial}{\partial t'}+\frac{\partial x'}{\partial x}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&\frac{\partial\left\{\frac{\gamma}{c}(ct-\beta x)\right\}}{\partial x}\frac{\partial}{\partial t'}+\frac{\partial \left[\gamma\left\{-\beta(ct)+x\right\}\right]}{\partial x}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&\frac{\partial (-\frac{\gamma\beta x}{c})}{\partial x}\frac{\partial}{\partial t'}+\frac{\partial (\gamma x)}{\partial x}\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\\&=&-\frac{\gamma\beta}{c}\frac{\partial}{\partial t'}+\gamma\frac{\partial}{\partial x'}\nonumber\end{eqnarray}となる。
よって、これらを2乗した
\[\left(\frac{\partial}{\partial t}\right)^2=\left(\gamma \frac{\partial }{\partial t'}-\gamma c\beta \frac{\partial}{\partial x'}\right)^2\]と\[\left(\frac{\partial}{\partial x}\right)^2=\left(-\frac{\gamma\beta}{c}\frac{\partial}{\partial t'}+\gamma\frac{\partial}{\partial x'}\right)^2\]を、\[\frac{\partial ^2}{\partial x^2}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}\]に代入したのち、展開・整理すると、p310 末尾7~6行目のようになる。
p310 ダランベルシアンは x 軸方向のローレンツ変換で共変
\begin{eqnarray}y'&=&y\nonumber\\ \frac{\partial}{\partial y'}&=&\frac{\partial}{\partial y}\nonumber\\ \frac{\partial^2}{\partial y'^2}&=&\frac{\partial^2}{\partial y^2}\nonumber\end{eqnarray}同様に、\begin{eqnarray}z'&=&y\nonumber\\ \frac{\partial^2}{\partial z'^2}&=&\frac{\partial^2}{\partial z^2}\nonumber\end{eqnarray}これら2式を、\[\frac{\partial^2}{\partial x^2}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}=\frac{\partial^2}{\partial x'^2}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t'^2}\]の両辺に足すと、p310 末尾2~1行目の式\[\Box=\Box'\]が得られる。
これは、ダランベルシアン \(\Box\) を演算要素として含むマックスウェルの電磁場の波動方程式が、ローレンツ変換で共変であることを示している。
p311 ニュートンの運動方程式(拡張版)はローレンツ変換で共変
4元力、4元加速度(p370)を用いた表現形式\[F^i=ma^i\]へと変更する必要あり。
p311 重力場方程式は、ローレンツ変換では共変性がない
ラプラシアン\(\Delta\) (p61)\[\frac{\partial^2}{\partial x^2}+\frac{\partial^2}{\partial y^2}+\frac{\partial^2}{\partial z^2}\]に別要素\[-\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}\]を加えたダランベルシアン \(\Box\) には、ローレンツ変換に対する共変性がある(問題4.01)。
よって、これら別要素を両辺から控除してしまったラプラシアン\(\Delta\) 単独では、ローレンツ変換に対する共変性があるとは限らない。\[\Delta\neq\Delta'\]これは、ラプラシアン\(\Delta\) を演算要素として含む重力場方程式が、ローレンツ変換で共変とはならないことを示している。
p311 各種座標変換と共変性
一般相対性理論では、重力場方程式も共変となる。
§4 ローレンツ変換の導出
p314 1行目 S で見た棒の長さ
\(\longrightarrow\) p320
p316 l_4 の式
\begin{eqnarray}x&=&x_6+Vt\nonumber\\x-x_6&=&Vt\nonumber\\\frac{c}{V}(x-x_6)&=&\frac{c}{V}Vt\nonumber\\\frac{c}{V}x-\frac{c}{V}x_6&=&ct\nonumber\end{eqnarray}
p317 1行目 x 座標の値と x' 座標の値は一致すると限らない
座標の目盛りの大きさは一致している前提(p306, p323)。
\[\frac{\partial x'}{\partial x}=1\]
p317 慣性系 S で観察される点 A への光の到達
時間\(t_A\) で、棒左端の点 \(A\) は右側に \(Vt_A\) 進み、点 \(M\) からの光は左側に \(ct_A\) 進む。両者が同じ地点に達したときが、点 \(A\) への光の到達時なので、\begin{eqnarray}Vt_A+ct_A&=&L\nonumber\\(V+c)t_A&=&L\nonumber\\t_A&=&\frac{L}{c+V}\nonumber\end{eqnarray}として、時刻\(t_A\) が求められる。
よって、点\(E\) の \(x\) 座標は、\[L-ct_A\]に、\(t_A=\frac{L}{c+V}\)を代入して、\[L-\frac{cL}{c+V}\]となる。
p318 慣性系 S で観察される点 B への光の到達
時間\(t_B\) で、棒右端の点 \(B\) は右側に \(Vt_B\) 進み、点 \(M\) からの光は右側に \(ct_B\) 進む。両者が同じ地点に達したときが、点 \(B\) への光の到達時なので、\begin{eqnarray}ct_B-Vt_B&=&L\nonumber\\(c-V)t_B&=&L\nonumber\\t_B&=&\frac{L}{c-V}\nonumber\end{eqnarray}として、時刻\(t_B\) が求められる。
p320 観測される物の長さ=同時刻に存在するイベントの距離
\(tx\) 座標では、\(\overline{CD}\) や \(\overline{GH}\) が物の長さ
\(tx'\) 座標では、\(\overline{EF}\) が物の長さ
p321 収縮率 a(V)
収縮率 \(a\) は、\(V\) の関数なので、\(a(V)\) と表現している。
p322 \(S\) 系で静止、\(S'\) 系で観測
\(S\) 系で静止した物の長さ\(\frac{2c^2L}{c^2-V^2}\)が、\(S'\) 系では \(a(-V)\) されて \(2l\) として観測されるので、\begin{eqnarray}2l&=&a(-V)\frac{2c^2L}{c^2-(-V)^2}\nonumber\\ l&=&a(-V)\frac{c^2L}{c^2-V^2}\nonumber\end{eqnarray}これに、\[a(V)=a(-V)\]を代入して、\[l=a(V)\frac{c^2L}{c^2-V^2}\]
p322 ct=x
縦軸\(ct\)、横軸\(x\) のグラフでは、原点をとおる右上45度直線。p323 グラフでは、\(\overline{OA}\) を含む直線。
p323 t 軸、t' 軸
各々、\(ct\) 軸、\(ct'\) 軸の趣旨。
p323 x と ct の目盛の間隔と x' と ct' の目盛の間隔が同じ。
\[x:ct=x':ct'\]との前提に立つとの趣旨。
このとき、\begin{eqnarray}ctx'&=&ct'x\nonumber\\ \frac{ct}{ct'}&=&\frac{x}{x'}\nonumber\\ ct:ct'&=&x:x'\nonumber\end{eqnarray}である。
p323 観測される時間の長さ=同地点に存在するイベントの縦軸上の距離÷光速
\(S'\) 系で静止している点(\(S\) 系で等速運動する点)にかかるイベント \(E,~F\) について言えば、
- \(tx'\) 座標では、\(\frac{\overline{EF}}{c}\) が時間の長さ
- \(tx\) 座標では、\(\frac{\overline{GH}(E,~Fの ct 軸での差)}{c}\) が時間の長さ
p323 t' 軸上のイベント E,~F
\(S'\) 系で静止している点(\(S\) 系で等速運動する点)を想定している。\begin{eqnarray}cT':cT&=&2l:\frac{2c^2L}{c^2-V^2}\nonumber\\&=&2l:\frac{2c^2a(V)l}{c^2-V^2}\nonumber\\&=&a(V):\frac{c^2\left\{a(V)\right\}^2}{c^2-V^2}\nonumber\\&=&a(V):\frac{c^2\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}^2}{c^2-V^2}\nonumber\\&=&a(V):\frac{c^2\left(1-\frac{V^2}{c^2}\right)}{c^2-V^2}\nonumber\\&=&a(V):\frac{c^2-V^2}{c^2-V^2}\nonumber\\&=&a(V):1\nonumber\\a(V)cT&=&cT'\nonumber\\a(V)T&=&T'\nonumber\end{eqnarray}
- 1行目右辺は、目盛間隔の比率が同じこと(p323 の2~3行目)による(p322図表の右ボックス[\(S\) 系で静止している点(\(S'\) 系で等速運動する点)]の関係を用いたものではない)。
- 2行目は、p322図表の左ボックス[\(S'\) 系で静止している点(\(S\) 系で等速運動する点)]の関係 \(2L=a(V)2l\) を用いた。
- 3行目は、\(\frac{a(V)}{2l}\) を比の両項に乗じた。
- 4行目は、p322 の \(a(V)=\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}\) を代入した。
p323 a(V)T=T'
\(S'\) 系で静止している点(\(S\) 系で等速運動する点)を想定すると、\[a(V)T=T'\]が成立している。
例えば、速度 \(V\) を光速 \(c\) の3分の1とした場合は、\begin{eqnarray}a(V)&=&\sqrt{1-\frac{(c/3)^2}{c^2}}\nonumber\\&=&\sqrt{1-\frac{1}{9}}\nonumber\\&=&\frac{2\sqrt{2}}{3}\nonumber\\&\fallingdotseq&0.943\nonumber\end{eqnarray}となるので、\[0.943~T\fallingdotseq T'\]となる。これは、\(S\) 系で\(T=1\) 秒が経過したと観察される事象が、\(S'\) 系では約\(T'=0.943\) 秒しか経過していないと観察されることを意味している。
p323 いわゆる「時間が遅れて見える論」
\(a(V)T=T'\) を、
- 慣性系 \(S\) からは、慣性系 \(S'\) の時間が遅れて見える
等と表現することが日本語として適切か否かは、言葉の表現の問題である。
- 慣性系 \(S\) からは、慣性系 \(S'\) の時間基準ではより早い時間で事象が生じているように見える
- 慣性系 \(S\) からは、慣性系 \(S'\) において測定に用いられる単位時間の幅が間延びして大きくなっているように見える
との日本語表現もあり得る。
p323 いわゆる「時間がゆっくり進む論」
\(a(V)T=T'\) を、
- 慣性系 \(S\) に対して慣性系 \(S'\) の時間はゆっくり進む
との表現は、\(S\) 系からみた片面的表現である。
実際は、\(S,~S'\) 系どちらであっても、観測される側の系の単位時間が、観測する側の系から見ると間延びしているように見える(p326~327参照)。
すなわち、同じ設例であっても、観測する側の系を\(S'\) とすると、\(S\) 系は\(S'\) 系に対して、速度 \(-V\) で等速運動しているので、\(S\) 系で静止している点(\(S'\) 系で等速運動する点)を想定すれば(棒\(IJ\)の例[p321~322]の時間版)、時間に関して、逆の等式、\[T=a(V)T'\]が成立している。
これは、\(S'\) 系で1秒が経過したと観察される事象が、\(S\) 系では \(a(V)\) 秒(例:0.943秒)しか経過していないと観察されることを意味している。
p323 イベント A の座標変換
\(S=tx\) 座標におけるイベント\(A=(ct,~x)\) を、\(S'=t'x'\) 座標で表わす場合、p323 の下図で、
- \(x\) 軸上の \(\overline{BA}\) \(\longrightarrow x'\)軸上の\(\overline{EA}=\overline{OC}\)
- \(ct\) 軸上の \(\overline{DA}\) \(\longrightarrow ct'\)軸上の\(\overline{CA}=\overline{OE}\)
へと変換する。
- \(\overline{点(0,~ct)~A}\) \(\longrightarrow\)\(\overline{OC}\) ではない。
- \(\overline{点(x,~0)~A}\) \(\longrightarrow\)\(\overline{OE}\) ではない。
変換元線分の長さを変換後座標軸の第1象限に限定する理由は、本書では説明がない。
p323 位置座標の変換
\(\overline{BA}\longrightarrow \overline{OC}\)
観測される物の長さは同時刻に存在するイベントの距離であることを踏まえると(p320)、\(S'\) 座標におけるイベントの位置を求める場合、\(S'\) 座標との関係で同時刻 (\(ct'=一定\)) の2点からなる線分の長さを考えることになる。よって、\(S'\) 座標との関係で静止した長さと等速運動している\(S\) 座標における長さとの間の変換則(p322の図表左欄)を用いる。\begin{eqnarray}a(V)~\overline{OC}&=&\overline{BA}\nonumber\\\overline{OC}&=&\frac{1}{a(V)}\overline{BA}\nonumber\\x'&=&\frac{1}{a(V)}(x-Vt)\nonumber\end{eqnarray}
p324 時間距離座標の変換
\(\overline{DA}\longrightarrow \overline{OE}\)
観測される側の時間間隔\(\overline{DA}\)は、観測する側の時間間隔\(\overline{OE}\)の \(a(V)\) 倍に観測される(p323 設例[観測側が\(S\)、被観測側が\(S'\)]の逆パターン)。\begin{eqnarray}a(V)~\overline{OE}&=&\overline{DA}\nonumber\\\overline{OE}&=&\frac{1}{a(V)}\overline{DA}\nonumber\\ct'&=&\frac{1}{a(V)}\left(ct-\frac{V}{c}x\right)\nonumber\end{eqnarray}
§5 ローレンツ収縮の対等性
p326 S,~S'
- 6行目の\(S'\) は、そのままでよい。
- 8行目の「\(S'\) での座標」は、正しくは、「\(S\)での座標」。
- 9行目の各式は、ローレンツ変換(p324)の第1式に、設例情報を代入したもの。
- 10行目の各式は、ローレンツ変換の第2式に、設例情報を代入したもの。
- ローレンツ変換の第3式・第4式は、省略されている。
- 10行目左式を変形した\(x_1=\beta\gamma ct_1\) を9行目左式に代入したものが12行目左式。
p326 12行目
\(\gamma~(1-\beta^2)ct_1\)
\(\gamma, ~ \beta\) の定義より(p325)、\begin{eqnarray}\gamma~(1-\beta^2)ct_1&=&\frac{1}{\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}}\left(1-\frac{V}{c}^2\right)ct_1\nonumber\\&=&\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}ct_1\nonumber\\&=&\frac{1}{\gamma}ct_1\nonumber\end{eqnarray}
p326 末尾9行目
直前で求めた2つの式\[ct'_1=\frac{1}{\gamma}ct_1\]\[ct'_2=\frac{1}{\gamma}ct_2\]を引き算すると、\begin{eqnarray}c\left(t'_1-t'_2\right)&=&\frac{1}{\gamma}c\left(t_1-t_2\right)\nonumber\\t'_1-t'_2&=&\frac{1}{\gamma}\left(t_1-t_2\right)\nonumber\\ \gamma&=&\frac{t_1-t_2}{t'_1-t'_2}\nonumber\\1&<&\frac{t_1-t_2}{t'_1-t'_2}\nonumber\\t'_1-t'_2&<&t_1-t_2\nonumber\end{eqnarray}
p327 時計の進み具合を比べるために突き合わせることはできない
\(\longrightarrow\)記録した時刻を、互いに送信して照合することは可能か。
p328 双子のパラドックス
パラドックス(逆説)の対象が、論者により異なっている設例。
§6 一般の速度のローレンツ変換
p329 一般の速度
\(\vec{V}\)
慣性系\(S'\) の慣性系\(S\) に対する速度\(\vec{V}\)\[\vec{V}=\left(\begin{array}{c}V_x\\V_y\\V_z\end{array}\right)\]
空間中の任意のベクトル\(\vec{x}\)
\[\vec{x}=\left(\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}\right)\]
p330 正射影ベクトル
\(\left(\vec{x}\cdot\vec{e}\right)~\vec{e}\)
- 単位ベクトルが、\(\vec{e}\)
- 正射影の大きさが、\(|\vec{x}|\cos\theta=\vec{x}\cdot\vec{e}\)
この積で、大きさを持った方向(ベクトル)が表記できる。
p330 ベクトルの分解
ベクトル\(\vec{x}\) を2方向(速度\(\vec{V}\)方向と\(\overrightarrow{垂直方向}\))に分解すると、\begin{eqnarray}\vec{x}&=&\left(\vec{x}\cdot\vec{e}\right)\vec{e}+\overrightarrow{垂直方向}\nonumber\\\vec{x}-\left(\vec{x}\cdot\vec{e}\right)\vec{e}&=&\overrightarrow{垂直方向}\nonumber\end{eqnarray}この垂直方向のベクトルは、\(y,~z\) 軸の双方の要素が含まれている。
p331
\(|\vec{V}|\vec{e}=\vec{V}\)
\(\vec{V}\) と \(\vec{e}\) の方向は、軸\(l\) 方向で同じであるため(p330)。
p331 8行目
\(\vec{x}\cdot \beta\vec{e}\)
\[\vec{x}=(x,y,z)\]であり(p330)、\[\beta\vec{e}=\left(\frac{V_x}{c},\frac{V_y}{c},\frac{V_z}{c}\right)\]であるので、\begin{eqnarray}ct'&=&\gamma\left(ct-\left(\vec{x}\cdot \beta\vec{e}\right)\right)\nonumber\\&=&\gamma\left(ct-\left(\frac{V_x}{c}x+\frac{V_y}{c}y+\frac{V_z}{c}z\right)\right)\nonumber\\&=&\gamma\left(ct-\frac{V_x}{c}x-\frac{V_y}{c}y-\frac{V_z}{c}z\right)\nonumber\\&=&\gamma\left(1,-\frac{V_x}{c},-\frac{V_y}{c},-\frac{V_z}{c}\right)\left(\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z\end{array}\right)\nonumber\\&=&\left(\gamma,~-\gamma\frac{V_x}{c},~-\gamma\frac{V_y}{c},~-\gamma\frac{V_z}{c}\right)\left(\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z\end{array}\right)\nonumber\end{eqnarray}となり、\(ct'\) と \(\left(\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z\end{array}\right)\) との間の変換式(p332 の公式4.03の1行目。第0成分 \(ct'\) を求める式)が導かれる。
p331 末尾4~3行目
式(4.07)の第1成分、すなわち、\[\vec{x'}=\left(\begin{array}{c}x'\\y'\\z'\end{array}\right)\]の\(x'\) 成分は、\begin{eqnarray}x'&=&x+(\gamma-1)\left(\vec{x}\cdot\vec{e}\right)e_x-\gamma\beta e_x(ct)\nonumber\\&=&x+(\gamma-1)\left(\begin{array}{c}x\\y\\z\end{array}\right)\cdot\left(\begin{array}{c}e_x\\e_y\\e_z\end{array}\right)e_x-\gamma\beta e_x(ct)\nonumber\\&=&x+(\gamma-1)(xe_x+ye_y+ze_z)e_x-\gamma \beta e_x (ct)\nonumber\end{eqnarray}
この式に、\[\vec{e}=\left(\begin{array}{c}e_x\\e_y\\e_z\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}\frac{V_x}{|\vec{V}|}\\ \frac{V_y}{|\vec{V}|}\\ \frac{V_z}{|V|}\end{array}\right)\]及び\[\beta=\frac{V}{c}\]を代入すると、p331 の末尾3行目の式が得られる。
p331 末尾1行目
\begin{eqnarray}x'&=&-\gamma\frac{V_x}{c}(ct)+x+(\gamma-1)\left(\frac{V_x^2}{|\vec{V}|^2}x+\frac{V_xV_y}{|\vec{V}|^2}y+\frac{V_xV_z}{|\vec{V}|^2}z\right)\nonumber\\&=&-\gamma\frac{V_x}{c}(ct)+x+(\gamma-1)\frac{V_x^2}{|\vec{V}|^2}x+(\gamma-1)\frac{V_xV_y}{|\vec{V}|^2}y+(\gamma-1)\frac{V_xV_z}{|\vec{V}|^2}z\nonumber\\&=&\left(-\gamma\frac{V_x}{c},~1+(\gamma-1)\frac{V_x^2}{|\vec{V}|^2},~(\gamma-1)\frac{V_xV_y}{|\vec{V}|^2},~(\gamma-1)\frac{V_xV_z}{|\vec{V}|^2}\right)\left(\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z\end{array}\right)\nonumber\end{eqnarray}となり、\(x'\) と \(\left(\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z\end{array}\right)\) との間の変換式(p332 の公式4.03の2行目。第1成分 \(x'\) を求める式)が導かれる。
p332 一般のローレンツ変換(座標軸が平行である場合)
\[\left(\begin{array}{c}ct'\\x'\\y'\\z'\end{array}\right)=\Lambda\left(\begin{array}{c}ct\\x\\y\\z\end{array}\right)\]