一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する(第3章 テンソルと直線座標のテンソル場)§ 7~12

   石井俊全「一般相対性理論を一歩一歩数式で理解する」ベレ出版 の読後行間補充メモ

(→ 正誤表
(→ 事項索引
 

§7 物理流のテンソルの定義 



p252 テンソル(物理流)
基底を明示しないが、座標系K には何らかの基底が存在しており、ベクトル x について、成分xi=(x1x2)による表現が可能である。
同様に、座標系K にも何らかの基底が存在しており、同じベクトル x について、成分xi=(x1x2)による表現が可能である。
両者間の関係を、縮約記法で、xi=b jixjと表している。
これは、展開すると、(x1x2)=(b j1xjb j2xj)=(b 11x1+b 21x2b 12x1+b 22x2)との内容を現している。

p253 b jia kj=δ ki
A=(a 11a 21a 12a 22)
B=(b 11b 21b 12b 22)
について、行列A と行列B とが逆行列であることを示している(p121)。
p253 下付き添え字の場合 xi
基底は明示されていないが、相対基底は存在しており、相対基底の成分xi=(x1x2)による表現が可能である。
この相対基底の別座標系表示(ダッシュ付き)を考えると、元の座標系と別座標系間の成分の関係は、縮約記法で、xk=a kpxpとなる。
通常の基底の場合xi=b mixmとあわせて表現すると、xki=b mi a kp xpmと表される。

p253 数の組 S   p  qm  n
S     p  qsm  nrは、(r+s)次元の多次元配列。
例えば、2次元配列として、S  pm=(x 11x 21x 12x 22)を考えると、S  ki=b mi a kp S  pmは、縮約表記であり、行列形式で表現すると、(S  11S  21S  12S  22)=(b m1 a 1p S pmb m1 a 2p S pmb m2 a 1p S pmb m2 a 2p S pm)を示しており、例えば、1行2列目の要素についてみると、S  21=b m1 a 2p S pm=b 11 a 21 S 11+b 11 a 22 S 21+b 21 a 21 S 12+b 21 a 22 S 22を示している。

p255 末尾9行目 δ mvT  vpmn=T  mpmn
v=1 のときは、δ m1T  1pmn=δ 11T  1p1n+δ 21T  1p2n=1T  1p1n+0T  1p2n=T  1p1n他方で、v=2 のときは、δ m2T  2pmn=δ 12T  2p1n+δ 22T  2p2n=0T  2p1n+1T  2p2n=T  2p2nよって、両場合をまとめると、δ mvT  vpmn=T  mpmnとなることを式変形に用いている。



§8 テンソルの添え字の上げ下げ 



p258 6行目 x lk=δ lk
題意のT は、その基底 ekfl のうち、k=l となる基底(e1f1, e2f2 )の係数が1で、その他の基底(e1f2, e2f1 )の係数は0であるため、その成分 x lk は、 x lk=(1001)=δ lk と表すことができる。

p259 問題3.36 赤色の
題意は、両基底のテンソル積を求め、そのうえで、赤色の について縮約を採れ、との趣旨である。

p259 赤字注 「最後の e を一番前に置くと」
成分添え字に対応する基底であることが基底添え字の表記から分かれば、基底の表記順序は固定されず、どこに置いても良いという表記ルール(p214)に従った。

p261 元 S, g の縮合
先ず、元 S, g のテンソル積を求めると(ベクトルの上矢印を省略)、Sg=33e1e2f2f1f135e1e2f2f1f24(1)e2e2f1f2f142e2e2f1f2f2この縮約(各項の最初の e の添え字と末尾2つめのf の添え字について)を採ると、(1) 部分(最初の e の添え字と末尾2つめのf の添え字が一致しない項)は消え、(2)残った項の最初の e と末尾2つめのf も消えるので、U=33e2f2f135e2f2f24(1)e2f1f142e2f1f2=9e2f2f115e2f2f2+4e2f1f18e2f1f2となる。
ここで、問題文の指示に従い、元g にあった基底f で縮合後もなお残っているもの(=各項右端のf)を、元S に初めあった e の箇所(=各項左端)に置きなおすと(基底順序を拘束しない表記ルール=p214 のため場所変更可)、U=9f1e2f215f2e2f2+4f1e2f18f2e2f1が得られる。

p261 単位テンソルI
Sg との縮合 U を作る。
この U  と h (=g1) との縮合は、S に等しい。

gh (=g1) との縮合I を作る。
この単位テンソル I  と S との縮合は、S に等しい。

p262 gnpgpj=δ jn
n, p)成分がgnp である行列(a11a12a21a22)と(p, j)成分がgpj である行列(b11b12b21b22)の積は、(a11a12a21a22)(b11b12b21b22)=(a11b11+a12b21a11b12+a12b22a21b11+a22b21a21b12+a22b22)=(an1b11+an2b21an1b12+an2b22)=an1b1j+an2b2j=anpbpjと縮約表記できる(n, j は止まった添え字[分割]、p は走る添え字[和])。
上記2つの行列が互いに逆行列であるとき、その積は、(1001)=δ ki=δ jnと縮約表記できる(i, k は止まった添え字[分割]であり、任意の添え字に変更できる)。
従って、gnpgpj=δ jnが成立する。

p262 δ jnA mkj=A mkn
A の走る添え字 jδ の止まった添え字 n に入れ替えた(p121)。

p262 対象テンソル gij=gji
ij 列目の要素が、ji 列目の要素に等しいテンソル。
例えば、gij=(abcbdecef)gji=(abcbdecef)
の場合、gij の右添え字 j 列(例:3列目=c,e,f)との縮合をとることは、左添え字 i 行(例:3行目=c,e,f)との縮合をとることと同じ結果となる。

p263 転置行列 tA
例えば、B=(123456789)の転置行列は、tB=(147258369)この場合の行列と転置行列とは等しくない。B tB
ij 列目の要素が、ji 列目の要素に等しい行列の場合は、その転置行列と等しい。
例えば、A=(123245356)
の転置行列tA=(123245356)
は、元の行列と等しい(対称行列)。A= tA

p263 逆行列 A1
例えば、対称行列A=(1223)の逆行列は、A1=11322(3221)=(3221)である。
このij 列目の要素は、ji 列目の要素に等しい(対称行列)。
A1= t(A1)

p263 3行目 t(AA1)= t(A1) tA
公式(積の転置は、順番を交換した転置の積)t(AB)= tB  tAを用いた。
(参考:転置行列の基本的な4つの性質と証明[高校数学の美しい物語])

p263 V の次元が n 次元
V の次元が n 次元のとき
  • V の次元は n 次元
  • T 12(V)=VVV の基底は n3
  • T 12(V) の元A の成分 A mkjn3 次元配列

p263 縮合と情報量保存
縮合は、テンソル積を特定の添え字で縮約する演算なので、当然に情報量が保存されているわけではない。gg1 が逆行列であるため、結果的に、A mkj に戻るに過ぎない。

p264 テンソルA の表し方
図表のどれを用いてもかまわない( g, g1 で変換できるため)

p265 7~8行目 gkigij=δjk
gki, gij は逆行列であるため。

p265 9行目 δjkglj=glk
g の走る添え字 jδ の止まった添え字 k に入れ替えた(p121)。


§9 テンソル場のことはじめ 



p267 位置x での 応力テンソル τx
3行3列の行列たる応力テンソルτ (p137)は、以下のとおり。τ=(τxτyτz)=(τxxτxyτxzτyxτyyτyzτzxτzyτzz)
テンソル場は、テンソルの成分が座標 x の関数となっている。
τx=(τxx(x)τxy(x)τxz(x)τyx(x)τyy(x)τyz(x)τzx(x)τzy(x)τzz(x))

p267 τxnx は、(1, 1) テンソルと (1, 0) テンソルの縮合
応力テンソル τx は、行と列の2つの次元を有する。これをe,f の2つの基底に対応させると、(1, 1) テンソルとみなせる。
nx は、三次元ベクトルであり、ei という1つの基底で表わす(i=1, 2, 3)ことにすると、(1, 0) テンソルとみなせる。

p271 f=x1+2x2
x1 軸(赤色)、x2 軸(緑色)、f(x1, x2) 軸(青色)とした場合のグラフは、以下のとおり。

p271 f=3x12x2
x1 軸、x2 軸、f(x1, x2) 軸上のグラフは、以下のとおり。


小問(1)ダッシュ付き成分表示への変換則は、行列で与えられているので、(x1x2)=(3152)(x1x2)=(3x1x25x1+2x2)これに、(x1x2)=(11)を代入して、(x1x2)=(315+2)=(23)

p272 スカラー場は、(0, 0)テンソル場
線形空間V での座標変換後も、スカラー場は同一点であれば同じ値となる。テンソル場T 00(V) は、基底のない成分のみの多次元配列であり、これをスカラーとみなす(p225参照)。テンソル場T 00(V) の元T の成分の書換則は、
T(x)=T(x)と表記できる。
これは、定義3.38によれば、a ji が0個(s=0)、b ji が0個(r=0)の、(0, 0)テンソル場と言える。

p273 (x1)2, (x2)2
括弧の外の2は、2乗の趣旨か。

p274 ベクトル場は、(1, 0)テンソル場
線形空間V での座標変換により、テンソル場T srの元T の成分の書換則は、
Ti(x)=b jiTj(x)と表記できる。
これは、定義3.38によれば、a ji が0個(s=0)、b ji が1個(r=1)の、(1, 0)テンソル場と言える。

p274 表現行列 P=A1PA
図左下から左上への基底変換 ee の取替行列をA とすると、
  • 図左下から左上への成分変換 xixi の取替行列はA1 
  • 図左上から左下への成分変換 xixi の取替行列はA 
  • 図右下から右上への成分変換 xixi の取替行列はA1
である。
図左上から出発して、右上へ遷移する成分変換ルートは2つあり、
  • P ルート … 図左上→右上
  • APA1 ルート … 図左上→左下→右下→右上
の2つである。
両者について、P=A1PA が成立している。
同取替行列はいずれも左側方向から成分 xi に掛ける。右辺の場合、A, P, A1 の順に掛ける。

p275 各点を1次変換する行列 T は、(1, 1)テンソル場
座標の1次変換の表現行列 T とダッシュ付き座標での1次変換の行列 T との書換則は、
T lk(x)=b ik a ljT ji(x)と表記できる。
これは、定義3.38によれば、a ji が1個(s=1)、b ji が1個(r=1)の、(1, 1)テンソル場と言える。


§10 スカラー場の微分 



p276 2次元以上になると近づき方は無数
例えば、2次元(面)の場合、面上のある点に近づく方法は、当該点をとおる曲線や直線ごとに2つあり、そのような曲線等は無数に想定できる。

p276 スカラー場
例えば、f(x1, x2)=x1+(x2)252のスカラー場の場合、立体グラフは、x1 を赤色軸、x2 を緑色軸、f(x1, x2) を青色軸として、以下のように描画できる。


各座標にスカラー値が貼りついているイメージでは、以下のようになる。

曲線 C 上の各点にある値がスカラー場の値である。
パラメータ t により、曲線 C 上の座標 (c1, c2) が定められ、同座標にあるスカラー値 f(c1, c2) が一意に定まる。

p277 曲線 C に沿ったスカラー場 f の微分係数
パラメータ t を微小変化させたときのスカラー量 f の変化量のこと。
dfdt=fx1x1t+fx2x2t=f(c1, c2)x1c1t+f(c1, c2)x2c2t=f(c1(t), c2(t))x1c1(t)t+f(c1(t), c2(t))x2c2(t)t1行目で、2変数関数の合成関数の微分の公式(定理1.07。p29)を用いた。
2行目で、f が (c1, c2) の2変数関数であることを明示。xi=ci につき xici へ置き換え 。
3行目で、ci が パラメータ t の関数であることを明示。

p277 曲線 C と曲線 D
曲線 C のパラメータ t=a における点 A の座標は、(c1(a)c2(a))である。
また、曲線 D のパラメータ e=b における点 A の座標は、(e1(b)e2(b))である。
両曲線がともに点 A を通る場合、 点 A の座標は一致するので、(c1(a)c2(a))=(e1(b)e2(b))が成立する。

また、点 A における曲線 C の接線ベクトルは、点 A での微分係数として、(dc1(a)dtdc2(a)dt)となる(ベクトル場 f の傾きではなく、曲線 C の傾き)。
また、曲線 D の接線ベクトルは、点 A での微分係数として、(de1(b)dsde2(b)ds)である。
これら接線ベクトルが一致するので、(dc1(a)dtdc2(a)dt)=(de1(b)dsde2(b)ds)が成立する。

p278 スカラー場 f の点 A での (η, ξ) 方向の方向微分
スカラー場 f(x1, x2) での微分(位置 xi 微小変化に伴うスカラー場 f の変化量)は、(f(a1, a2)x1, f(a1, a2)x2)である。
他方で、曲線上の点 A での接線ベクトルを、以下のように置くと(パラメータ t 微小変化に伴う位置の変化量)、(ηξ)=(dc1(a)dtdc2(a)dt)スカラー場 f の点 A での (η, ξ) 方向の方向微分は、以下のように、両者の内積として表現される。(f(a1, a2)x1, f(a1, a2)x2)(ηξ)=f(a1, a2)x1η+f(a1, a2)x2ξ

p279 方向ベクトルの付与範囲(曲線上  平面全体
(x1, x2) での方向ベクトル (η, ξ) を、ベクトル場 X を用いて平面全体で与える。 (ηξ)=X=(X1X2)=(X1(x1, x2)X2(x1, x2))
2行目・3行目の Xi は、Xi 軸方向の大きさを示す。
3行目は、Xi が位置の関数 (x1, x2 の2変数関数)であることを示す。

p280 スカラー場 f のベクトル場 X に沿った微分係数
ベクトル場 X を用いることで、以下のように、ベクトル場 X 上の微小変化に伴うスカラー場 f の変化量が得られる。fx1X1+fx2X2

p281 f の偏微分の変換則
ダッシュ付き成分から通常成分への変換 xixi の取替行列はA なので(p274)、(x1x2)=(a11a21a12a22)(x1x2)=(a11x1+a21x2a12x1+a22x2)この1行目の要素を比較すると、x1=a11x1+a21x2であり、この両辺を x1 で偏微分すると、右辺の x2 の項は、定数扱いとなるので、x1x1=x1(a11x1+a21x2)=x1(a11x1)=a11他の場合も同様に計算して、以下の4式が得られる。{x1x1=a11x1x2=a21x2x1=a12x2x2=a22これらの式を用いて、f の偏微分を考える。
スカラー場 f は、座標(通常、ダッシュ付き)の採り方によらず、平面上のある点に対しては同じスカラー値を示すので(p272)、f(x1, x2)=f(x1, x2)である。
そうすると、2変数の連鎖律(p29)を用いて、x1f(x1, x2)=f(x1,x2)x1x1x1+f(x1,x2)x2x2x1=f(x1,x2)x1x1x1+f(x1,x2)x2x2x1=f(x1,x2)x1a11+f(x1,x2)x2a12=(f(x1,x2)x1, f(x1,x2)x2)(a11a12)と変形できる。
同様に、x2f(x1, x2)=(f(x1,x2)x1, f(x1,x2)x2)(a21a22)も成立する。
両式をひとつの行列としてまとめると、(x1f(x1, x2), x2f(x1, x2))=(f(x1,x2)x1, f(x1,x2)x2)(a11a21a12a22)(fx1, fx2)=(fx1, fx2)(a11a21a12a22)これを縮約表記を用いて簡略化すると、fxi=(fx1, fx2)(ai1ai2)=fxjaijx の添え字について、反変を上付き・共変を下付きのルールで表示すると、fxi=aijfxjとなる。
これは、定義3.38(p270)によれば、a ij が1個、b ij が0個の、(0, 1)テンソル場と言える。

p282 スカラー場 fC に沿った微分(x 座標と x 座標)
座標を設定する以前から、スカラー場 f は実体として存在している。
よって、座標をどのように採っても、曲線 C に沿った f の変化度合いは、同じ。
問題3.41の式変形では、{x1=c1(t)x2=c2(t)を前提に、2変数関数の連鎖律(p29)を用いている。
また、t での微分をc˙1(t)=d c1(t)d tと表記している(p280末尾3行目の表記ルール)。

p282 末尾4~3行目
(fx1, fx2)=(fx1, fx2)Aの式変形は、p281 の式3.08において、(a11a21a12a22)=Aと表記したもの。

p283 1行目
座標の変換則(p280の式3.07)を縮約記法で表わしたもの、
c˙i(t)=b ji c˙j(t)=b ki c˙k(t)を、スカラー場 f の変換則に掛けている。

p283 4行目
δ kjc˙k(t)=c˙j(t)
は、c の走る添え字 k を、δ の止まった添え字 j に入れ替えた(p121)。

p283 ベクトル場 X
ベクトル場では、位置 (x1, x2) によって、ベクトルの矢印の向きと強度が異なる。
イメージ図は、p273 の赤色矢印群。そのうちの1つの矢印を取り出し(以下の図の緑色矢印)、e1 方向と e2 方向とに分解したときの係数(スカラー値)が、X1X2
X1X2 の値は、位置 (x1, x2) によって異なる。
すなわち、係数 X1X2 は、(x1, x2) の2変数関数。
  • X1(x1, x2)
  • X2(x1, x2)
緑色矢印は、座標を設定する以前から、実体として存在している。
よって、基底 e1, e2 をどのように定めても(ダッシュ付き基底に変更しても)、同じベクトルを指していることになる。X1e1+X2e2=X1e1+X2e2係数 X1X2 が、(x1, x2) の2変数関数であることを明記すると、X1(x1, x2) e1+X2(x1, x2) e2=X1(x1, x2) e1+X2(x1, x2)e2のような表記になる(p283 末尾から6行目の式)。

p284 fxiXi は、(0,0)テンソル場
スカラー場 f の微分の変換則(p281)fxi=a ikfxkとベクトル場 X の変換則Xj=bljXlの縮合(テンソル積(i=j) で縮約)をとると、fxiXj=a ikb ljfxkXlfxiXi=a ikblifxkXl=δ lkfxkXl=fxlXlとなる。
これは、定義3.38(p270)によれば、a ij が0個、b ij が0個の(0, 0)テンソル場である(p231の (r, s) 増減法則にも合致)。
すなわち、スカラー場 f のベクトル場 X に沿った微分は、スカラー場になることが計算式上も示された。


§11 テンソル場の変換則 



p285 問題3.42
無印4つが D、ダッシュ付き4つが D と、p286 で定義されている。

p286 行列のトレース tr A
正方行列 A について、A=(abcdefghi)そのトレース tr A は、
tr A=a+e+i行列 A と行列 Bの積 AB について、以下の交換則が成り立つ。tr(AB)=tr(BA)例えば、A=(abcd)B=(efgh)の場合、tr(AB)=tr{(abcd)(efgh)}=tr(ae+bgaf+bhce+dgcf+dh)=ae+bg+cf+dhであり、他方で、tr(BA)=tr{(efgh)(abcd)}=tr(ea+fceb+fdga+hcgb+hd)=ea+fc+gb+hd=ea+gb+fc+hd=ae+bg+cf+dhとなっており、確かに一致する。

p286 tr(BDB1)=tr(B1BD)
トレース内において、行列 BD と 行列B1 とを交換している。

p286 成分計算
tr(D)=tr(D)tr(fx1X1fx2X1fx1X2fx2X2)=tr(fx1X1fx2X1fx1X2fx2X2)fx1X1+fx2X2=fx1X1+fx2X2fxiXi=fxiXi

p287 スカラー場 f の2階偏微分の変換則
2行目のfx1=a 11fx1+a 12fx2
の部分は、p281 の中程の計算を用いている。
2行目から3行目の部分は、2変数の連鎖律(p29)を用いて、式変形をしている。
赤字注のx1x2=a 21等は、p281 の中程の計算を用いている。
その結果、a の下付き添え字が、a 2a 12 fx x の形の項からなる計算式に整理されたので、縮約記法を用い(k, l は走る添え字[和])、
x2x1=a 2ka 1l2 fxk xlとまとめられる。
他の場合も、同様に計算すると、
  • x1x1=a 1ka 1l2 fxk xl
  • x1x2=a 1ka 2l2 fxk xl
  • x2x1=a 2ka 1l2 fxk xl
  • x2x2=a 2ka 2l2 fxk xl
となる。
これら4式を、縮約記法で表現すると(i, j は止まった添え字[分割])、xixj=a ika jl2 fxk xlとなり、f の2階微分どおしの変換則が得られた。

p288 ベクトル場の曲線に沿った微分

p288 曲線 C に沿った微分
(Y1Y2)を各成分について、t に関して微分する。
Y1 の微分は、
Y1t=Y1x1x1t+Y1x2x2t=Y1x1c1(t)t+Y1x2c2(t)t=Y1x1c˙1(t)+Y1x2c˙2(t)となる。
1行目は、二変数の連鎖律(定理1.07)を用いた。
2行目は、xi=ci(t) を用いた。
3行目は、p280 の表記法を用いた。
Y2 の微分も、同様に計算できる。Y2t=Y2x1c˙1(t)+Y2x2c˙2(t)よって、ベクトル場 Y の曲線 C に沿った微分は、(Y1tY2t)=(Y1x1c˙1(t)+Y1x2c˙2(t)Y2x1c˙1(t)+Y2x2c˙2(t))となる。

p289 ベクトル場に沿った微分
各点での方向が与えられれば、ベクトル場 Y の方向微分が計算できるところ、各点 (x1, x2) での方向ベクトルをベクトル場 X=(X1(x1, x2)X2(x1, x2))と与えれば、ベクトル場 YY1 成分について、X=(X1X2) 方向の微分係数は、p279~280 と同様に、以下のように表現できる。Y1x1X1+Y1x2X2同様に、ベクトル場 YY2 成分についても、Y2x1X1+Y2x2X2と表現できる。
この2つをまとめると、ベクトル場 X に沿ったベクトル場 Y の微分は、(Y1x1X1+Y1x2X2Y2x1X1+Y2x2X2)と表される。

p289~290 ベクトル場 Y の微分(ただの微分)の変換則
  • 物理的な意味は?
  • Yi はベクトル場」…Yi 方向に向きが限定されたベクトル?
  • xlxk=akl は、p281参照。

p290 ベクトル場 Y をベクトル場 X に沿って微分した式
止まった添え字 i で分割し、走る添え字 j で和をとると、YixjXj=(Y1xjXjY2xjXj)=(Y1x1X1+Y1x2X2Y2x1X1+Y2x2X2)となるので、確かに、p289 のベクトル場 X に沿った微分の式を表している。

p290 問題3.44
前提 Xk=b mkXmは、p283 の結果(縮約記法で赤色注)を用いている。
x の添え字と X の添え字が、共通のk であるので、k=k で縮約した計算となっている。

p290 縮合
  • ベクトル場Y…変換則の b が1個(p283赤字注)(1,0)テンソル場
  • ベクトル場Y の微分…変換則の baが各1個(p290の4行目)(1,1)テンソル場
  • ベクトル場Y のベクトル場 X に沿った微分…変換則の b が1個(p290)(1,0)テンソル場


§12 テンソル場の変換則 まとめ 



p291 (’有り)と(’無し)との間の変換則
変換則の右辺にある a, b の個数により、定義3.28(p252)により、どの (r, s) テンソル場かが定まる。
(ア)…p272
(イ)…p283 赤注記
(ウ)…p281 式3.08
(エ)…p286~288
(オ)…p290
(カ)…p285 式3.09
(キ)…p299 問題3.44


p292 テンソル演算と階数
テンソル場のテンソル積、縮約、縮合に伴う (r, s) の変化は、p231 のとおり。


p292 微分すると共変次数 s が1増える
(0, 0)(0, 1) …(ア)と(ウ)を比較
(0, 1)(0, 2) …(ウ)と(エ)を比較
(1, 0)(1, 1) …(イ)と(オ)を比較


p292 ffxifxiXi
(ア)と(ウ)と(カ)の特殊形態(i=j)を比較。
(カ)で(i=j)とすると、p284 の計算と同様に、fxiXj=a ikb ljfxkXlfxiXi=a ikblifxkXl=δ lkfxkXl=fxlXlとなる。
これは、定義3.38(p270)によれば、a ij が0個、b ij が0個の(0, 0)テンソル場である。


p293 YiYixiYixiXi
(イ)と(オ)と(キ)を比較。


p293 定理3.45
XmxmT   は、p293 の1行目の表記順で表わせば、T   xmXmのこと。


p293 (1,0)テンソル場の発散 div は、スカラー場
i=1,2,3    j=1,2,3 の場合がある添え字を用いた
Ai(x)xj={A1(x)x1A1(x)x2A1(x)x3A2(x)x1A2(x)x2A2(x)x3A3(x)x1A3(x)x2A3(x)x3は、3×3=9個の場合分けを示しているが、これを i=j で縮約すると(p227)、i=j の項である3個の項のみの和となるので(基底は非表示のまま)、ji と表記し、Ai(x)xi=A1(x)x1+A2(x)x2+A3(x)x3となる。
これは、発散 div の定義であるから(p41)、Ai(x)xi=divA(x)である。
左辺 Ai(x)xi は、変換則(オ)(p291)で、i=k とした場合に得られる式を用いて、以下のように、ab も含まない変換則を導けるから、(0,0)テンソル場、すなわちスカラー場である。Ai(x)xi=b jia ilAj(x)xl=a ilb jiAj(x)xl=δ jlAj(x)xl=Aj(x)xjよって、(1,0)テンソル場 Ai(x) の発散divA(x) は、スカラー場である。

p294 (0,1)テンソル場
共変ベクトル場T 10(V)=Vの成分Ai(x)を想定。

p294 A が(1,0)テンソル場のとき、rotA は(1,1)テンソル場
rot は、p60 のとおり、xi で1階微分の形のため、共変成分が1増加する。

p294 rot は、(1,0)テンソル場の変換則を持つ。
要確認。

p294 rot が座標に拠らないことの証明
p55

p295 ラプラシアン Δ
中央辺の i=1n2 fxi xii は、代数であり、1からn まで入力された各項を合計するとの趣旨。
n=3 の場合が、p61 のラプラシアン。
右辺の2 fxi xii は、縮約記法の走る添え字であり、i=1,2,,n の各項を合計するとの趣旨。

p295 正規直交基底なので、A は直交行列になり、tAA=E
未証明(p248 でも未証明)。むしろ、p249 では、本書では直交基底でない場合の変換則を考えるとしていた。