新民法542条1項4号(定期行為の履行遅滞)

新民法542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。

商法525条 商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。



売買代金請求に対して、定期行為の履行遅滞があるとして、売買契約は無催告解除された旨が主張されている事案を考える。

この場合、売買契約の成立という請求原因に対して、同売買契約の解除にかかる事実は、請求原因と両立し、かつ、売買契約成立による売買代金請求権の発生という効果を阻害する効果を有するので、抗弁として機能する。この抗弁の各要素を、新民法542条1項4号に従い、仮置きすると、以下のようになる。



もっとも、この抗弁については、以下の各点からの修正が考えられる。

  • 「令和2年7月7日が経過するも、Xはうちわ5万本をYに交付しなかった」については、「交付しなかった」との部分が消極的事実となっているが、当事者間の主張・立証責任の観点からは、「うちわ5万本を交付した」という積極事実について、交付という履行をする側であるXに主張立証責任を負担させるのが公平である。→「期限内の交付」を再抗弁へ
  • 売主が商人である場合、解除の意思表示は不要(商法525条)。→Xがうちわ製造業者である場合は、その旨を追加したうえで、「解除の意思表示」を削除
  • 請求原因で既に反対債務(うちわ引渡債務)があることが現れており、同時履行の抗弁権の存在効果により、履行遅滞の違法性が阻却されている。このため、同効果を阻害するため、反対債務(売買代金債務)が後払いであることの合意等の要素が追加で必要である。→「後払い合意」を追加

この結果、BDは、以下のようになる。






(参考文献)
・伊藤滋夫編著「新民法(債権関係)の要件事実Ⅱ」青林書院410頁
・岡口基一「要件事実マニュアル2」(第5版)ぎょうせい18、30、38~39頁