新民法536条2項(請負契約に基づく未工事分の報酬請求)

新民法536条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。



請負人が、仕事を途中で完成できなくなった場合、未完成部分に相当する請負報酬は、注文者に請求することができないのが原則である。

しかし、注文者の責めに帰すべき事由によって仕事を完成することができなかったときには、新民法536条2項により、仕事完成債務の債権者たる注文者は、反対給付たる請負報酬金支払いの履行を拒むことができないから、これを未完成部分に相当する報酬請求権の具体的発生根拠と考えることができる。

この場合の請求原因及び抗弁は、新民法536条2項によれば、以下のとおりである。



この点、反対給付(請負報酬支払)の履行を拒絶するとの抗弁権をYが主張するか否かはYの意思にゆだねられていることを重視し、一旦は、Yから履行拒絶の抗弁が主張されるか否かを確認し、そのうえで、なお、履行拒絶の抗弁が出されるようであれば、再抗弁において、新民法536条2項の事由をXに主張させれば良いとする見解もある。同見解の請求原因、抗弁等は、以下のとおりである。



なお、再抗弁(法559→法567)は、上記考え方とは別の理由(契約内容適合物の受領拒否後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって完成不能となった場合の危険の移転)により追加されたものである。

以上は、未完成部分に相当する請負報酬請求権を訴訟物とするものである。

これに対して、同様の事案だが、Yが新民法641条(規定内容は改正前の法と同じ)により請負契約を任意解除した場合は、どうなるか。


新民法641条
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。


この場合、解除時に請負契約が終了するので、請負人はもはや請負報酬の請求をすることはできないが、損害賠償請求権を訴訟物として構成することは可能である。
その場合の請求原因は、同条によれば、以下のとおりとなる。